それぞれ志望する業界はあるかと思いますが、理想ばかり追い求めず、バランス感覚を持って取り組んでください。

軍人と化したDB


The Rough Time Story「その5」<ジェネレーションギャップ>
放課後、俺はいつもなら糸井と仕事に向かうのだが、今日はあいにくの雨。気晴らしにクラスのガキどもの遊びをのぞいてみることにした。
ヤツらはなんか懐かしい雰囲気がするトレーディングカードを出していた。
俺は懐かしみを込めてヤツらに声をかけた。

「ほー、おまえら、ギャザ持ってんのか……俺もだいぶやり込んだものだ。」

しかし、返ってきた言葉は意外なものであった。
「田所くん、これはデュエル・マスターズっていうんだよ」

俺はその「デュエル・マスターズ」とやらは知らない。だが、どう見てもデザインはギャザである。実際に遊んでみると、ギャザを簡略化したルールであり、何かが足りない。

そういえば、俺が糸井と休み時間に「自由帳RPG」なるもので遊んでいたことを思い出した。訳のわからん迷路を書いたり、明らかに薄っぺらな物語、殴り書きの落書き程度の画力で描かれた敵。当然、こいつらは知らないだろう。

その後、ランドセルを持ち合い、帰ることとした。もちろん、当時のノリで中身はかなり重くなっている。
ジャンケンでは三浦が負けた。つまり、三浦が全員分のランドセルを持つこととなる。
三浦は俺のランドセルを持った瞬間、こういった。
「田所くんのランドセル、重い!!」
わざと重くしているのである。なぜなら……
「何で重いか知っているか?修行だ。修行すればかめはめ波とか霊丸とか打てるようになるんだぞ」
と軽いノリで話した。
しかし、一緒にいた新庄はこんなことを言った……
「霊丸って何?」
しまった、忘れてた。今のガキどもは少し昔の漫画すら知らないことを……
俺はうまく説明するのにかなり苦労した。


The Rough Time Story「その6」<大人の頭>
俺はいつもどおり、6時前に起きて朝食を作り、依田さんの天気予報を見ながら朝飯を食べつつ新聞を読む。そして、7時40分頃、2度目の天気予報が終わった後に家を出る。いわゆる「ナガラ族」というやつだ。
ところが今日は寝坊をしてしまった。新聞は学校で読むことにしよう。

新聞を広げつつ、朝のショートホームルーム……いや、ここは小学校だったな、確か「朝の会」だったな。それまで新聞を広げていたら清野先生が入ってきた。

「へー、田所くんって新聞読めるんだ。漢字とか読めるの?」
「漢字は読める。ある程度のものなら。」

馬鹿にするな、と言いたいが、この姿で新聞を読んでいるのも相当違和感があるようだ。

次に、生活科の授業。
校内にある草や木の調べ学習と言ったところか。俺はありきたりなソメイヨシノではなく、国有地に隣接した場所に植えられているヤマモモの木を調べた。

ヤマモモ ヤマモモ科
常緑広葉樹 束生 樹高2メートル程度 幹周り55cm
赤い果実をつける樹木。赤い果実は食用にも適する。
街路樹に多く植えられているが、果実は鶏の糞害にもつながるため、街路樹として植えられいるのは雄木がほとんどである。


何気なく書いたこのプリント、清野先生をドン引きさせた。この時点では習わない常用漢字を使用したり、専門用語を交えて樹木のレポートを書いているからだ。
俺は農業関係の高校、短大を卒業しているため、この分野についてはお茶の子さいさいだ。
もっとも最低限、高校の授業でこの程度の内容が書けなければ先生に怒られていると思われる。だが、環境は大きく違い、小学校でここまでの知識はいらない。

清野先生にはその後も何かと気にかけられ、先生に板書を見られた。
算数のノートにも関わらず、今期の作付け計画を空いた場所に書いていたが、それ以上に……

途中式が丁寧に書いてある
板書のオールひらがなを漢字に直す
名前が漢字書き
そもそもノートが横罫線のみのノート

これがまずかったのか、良かったのか……先生はさらに驚いた。
その後、俺はなぜか職員室に呼び出された。

今の教頭、三村教頭だ。

おれは開口一番こう言われた
「田所さん ここだけの話ですが、私と校長だけです。あなたが成人であることを知っているのは……」
俺は教頭になぜ知っているかと問うと……
教育委員会から、あなたの元担任から連絡があり、見たことのある名前だと言っていました。とりあえず、私と校長だけしか知らないのでくれぐれも……」

そして俺は、ほっとした気持ちで教室に戻ることにした。

……つづく