歌丸と宇多丸はなぜ毛がないのか

毛虫は好きかい?答えは聞いていない。

毛虫全体が毒を持っていると勘違いされやすいが、毒を持っているのは三分の一程度。

全ての種に毒がある毛虫
イラガ科
全ての幼虫(毛虫)と一部の種はさなぎに毒がある。すべての卵と成虫は毒を持たない。
毒は注射式に針から刺す形で注入される。
正式名称の「イラガ」と言うより、通称の「電気虫」と言う方が伝わりやすい。

ほとんどの種に毒がある毛虫
カレハガ科
オビカレハ(梅毛虫)以外、全ての種の幼虫・さなぎに毒がある。
松食い虫や竹食い虫は有名。
成虫には毒がないものがほとんど。
名前の由来は成虫の羽が枯れ葉に見えるから。

ヒトリガ科コケガ亜科
ほとんどの種に名前に「〜ホソバ」と付く。成虫には毒はない。
科の名前の通り、苔を食べる種が多い。
後述するアメシロやカノコガと科は一緒だが、性質は益虫のテントウムシと害虫のテントウムシダマシ(マダラテントウ亜科)と同じぐらい違うので、別項で記述する。

約半数の種に毒がある毛虫
ドクガ科
ツバキやチャの仲間に付くチャドクガがあまりにも有名な種。チャドクガのイメージが強すぎるため、この科にいる毛虫全てに毒があると思い込んでしまうほど。チャドクガの他にはナミドクガ、モンシロドクガなどが毒を持つ。
毒は粉状であり、付着すると拡散して被害が拡大しやすい。
これらの種は成虫でも毒を持つ、数少ない種となっている。
マイマイガのように限られた時期(孵化直後)のみ毒を持つ種も確認されている。
幼虫は集団で孵化し、コロニーを形成するものが多い。
ツバキ科以外の果樹や造園樹木に付着する同種は意外と毒を持つ種が少ない(リンゴドクガ、エルモンドクガ、スギドクガなど)。見た目は派手なものについては北斗に出てくるようなモヒカンのような毛を持つ種も少なくないが、地味なものは意外と地味な毛虫。
種が非常に多く、いろいろな亜種が「ドクガ科」というひとくくりにされている感はあるが、毒の有無以外では共通点があったりするものも多い。
成虫は非常に地味な姿をしたものがほとんど。いかにも「THE 蛾」と言ったものも多いが、ケヤキやニレなど、超大型の樹木を食するエルモンドクガのように洗練されたワンポイント模様を持っており、独特の美しさを持つ種もある。
無毒種のエルモンドクガマイマイガを有毒種のチャドクガやナミドクガと同じ仲間と言わなければ違う種だと思う人も少なくなく、言われてみれば「あー、なるほど。やっぱり」と同意する人も少なくない。
マイマイガクレイアニメニャッキ」の動きと顔のモデルになったと言われており、その動きは奇天烈で、虫好きにとっては面白いが、虫嫌いにとっては不愉快以外の何物でもない。

マダラガ科
タケノホソクロバなどに毒を持つ種が確認。毒を持たない種でもミノウスバのように毒液を発射する種もある。
毒の刺し方はイラガ科のそれと近い。
全ての成虫に毒はない。
成虫は蜂のような透明の羽を持つ種が多い。

すべての種に毒がない毛虫
ヒトリガ科(コケガ亜科を除く)
アメシロやカノコガなどが有名。多くの幼虫は毒々しい毛虫だが、毒は持っていない。
アメシロの幼虫はドクガ科幼虫と同じく、コロニーを作る。
逸話としては、アメシロの幼虫は侵入当時、鳥が食べると危険なチャドクガ(スズメなど、小型の鳥は食べると死亡することもある)と間違えて食べなかったが、間違って食べた鳥がいて、美味だったため、その後食べられるようになり、食物連鎖に組み込まれたという話もある。
カノコガの成虫は黄色と黒のアクセントが鮮やかで、美しい。

ヤママユガ
クスサンなどが有名。
成虫は10cm以上と大きく、美しい種がほとんど。虫好きには堪らない造形で魅了される人も少なくない。
オオミズアオやクスサンの成虫は、その洗練された羽の形や模様、櫛形の触角など、見れば見るほどため息が出るほど美しい。特撮のモスラのモデルはこれらの種がモデルになっている。
幼虫は大きいものでは10cm近くまで大きくなる毛虫。

ヤガ科
ヨトウムシなどでおなじみのヤガ科幼虫のほとんどは毛を持たないイモムシであるが、フクラスズメなど、一部の種で毛虫が確認される。
毛虫でも全ての種は毒針毛はもたない。

タテハチョウ科
オオムラサキヒョウモンチョウの仲間。
いかにも毒々しいものもあるが、全ての種に毒はない。

シロチョウ科
有名どころはモンシロチョウの青虫。菜っ葉を食い荒らすクセモノ。
近くで見ると産毛のような毛を確認できるので、厳密にはイモムシではなく、毛虫の仲間。
北海道や青森県にいる「オオモンシロチョウ」の幼虫は明らかな毛虫の形状である。


おわかりいただけたであろうか。
大まかに毒を持つ毛虫はイラガ科、カレハガ科、ヒトリガ科コケガ亜科の3種類である。
ドクガ科、マダラガ科など、毒を持つ種と持たない種が入り交じる種は判断が難しいため、知らない人は触らない方が安全であるだろう(というより、毛虫を積極的に触る人はあまりいないと思うが)。

逆にヤママユガ科、ヒトリガ科(コケガ亜科を除く)、チョウの仲間の毛虫は毒を持たない。
成虫はきれいで人気のあるオオムラサキを筆頭としたタテハチョウ科だが、幼虫のグロテスクな見た目で、ホタルのように「成虫は好きだが、幼虫は嫌い」と言う人も少なくない。

さなぎを経て姿を変える完全変態型昆虫の幼虫は嫌われることが非常に多い。
きれいな成虫もいいけど、そのエキセントリックな姿をした幼虫を観察してみることも、意外と楽しいかもしれない。